2022/07/10 20:27
生豆の選定、焙煎、管理、抽出は全て等しく珈琲にとって大切な要素で、
どれか一つだけ特化しても美味しい珈琲は成立しないと思っている。
珈琲のプロとしてお客様に提供してきておよそ20年。
直火や半熱風にそこまで強い拘りがあるわけではなかった。
初めて焙煎をしたのは、12歳くらいの頃だったと思う。
両親が通っていた近所の珈琲屋で生豆を買ってきて、銀杏煎りと七輪で焼いてみたのだ。
初めてにしては結構上手に焼けていたと思う。
冷却には竹ざるとドライヤーを使ったのをよく覚えている。
両親に飲んでもらったら二人とも凄い喜んでくれた。
それが嬉しくて、手回しの直火焙煎機を買い10代は焙煎を研究していた。
20代になってプロの世界に入ってからは、勤め先が半熱風だった事や、大量の焙煎で安定させるなら半熱風だなと思い、自分で業務用焙煎機を購入する時も自然と半熱風を選んで、2kg、8kgと使っていた。
それぞれの釜を譲って、次の釜はどうしようかなと悩んでいる時に、日頃からお世話になっている大先輩の珈琲屋さんから、古いブタ釜の10kg釜があるんだけど使わないかい?と御連絡を頂いた。
ブタ釜で10kg。
しかも直火。
そんな釜があるのかと思い、調べてみても1kg、4kgしか情報は出てこない。
どうやら稼働品は、もう殆どないらしい。
随分悩んだ。
火力と排気のバランスは絶対に扱い難いだろうし、温度計もガス圧計もついていなかった。
でも、昔焼いていた直火の珈琲好きだったなと、ふと思った。
20代、30代と、仕事として焙煎のクオリティを安定させてきたけど、自分が本当に好きな珈琲を作れていたんだろうか。
ちょうど40歳の再スタートに、原点に戻るのも良いんじゃないか。
あれよあれよと話は進み、気が付けば焙煎所に設置され、悪戦苦闘の楽しい日々を送っている。